デザインにおける倫理性
倫理性とは・・・善と悪または正と誤りの間の区別に関する思考

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​現代の建築家倫理の必要性

​ 現在、世界中でデジタルデザインやBIMをはじめさらにAIが発達し普及し始めた。建築業界においても日建設計をはじめ様々な企業でAIの研究が進められている。その人間の役割が置き換えられていく中で、私たちは何を正とし何を誤とするのかの判断力が求められている。

​AI

Artificial intelligence
最近耳にするAIの事例のほとんどは、ディープ・ラーニングと自然言語処理に大きく依存しています。これらのテクノロジーを応用すると、大量のデータからパターンを認識させることで、ビジネスや生活における様々な難しいタスクをこなせるようにコンピューターをトレーニングすることができます。

Building Information Modeling
コンピューター上に作成した3次元の建物のデジタルモデルに、コストや仕上げ、管理情報などの属性データを追加した建築物のデータベースを、建築の設計、施工から維持管理までのあらゆる工程で情報活用を行うためのソリューションであり、また、それにより変化する建築の新しいワークフローです。

​CD

Computational design
高度の数学的手法とコンピューターシミュレーションを取り入れた設計手法。デザインの自由度を高めると同時に、構造的・機能的に問題や矛盾のない設計が可能となる。飛行機、自動車、建築物の設計で導入が進んでいる。

Simulation

Simulation
スケッチの要領で設計者が自らBIMモデルを創ることで、日影や風、光環境の解析が可能となります。より特徴のある高い品質の意匠提案が実現できます。

​DF

Digital fabrication
レーザーカッターや3Dプリンタなどの、コンピュータと接続されたデジタル工作機械によって、3DCGなどのデジタルデータを木材、アクリルなどのさまざまな素材から切り出し、成形する技術。

Internet of Things
IoT とは、従来インターネットに接続されていなかった様々なモノ、住宅・建物、車、家電製品、電子機器など)が、ネットワークを通じてサーバーやクラウドサービスに接続され、相互に情報交換をする仕組みです。

※デジタルデザインやBIMをはじめとした意匠設計の最先端技術の中で最も建築設計の職能にかかわってくるのがAIである。現在では建築学生や設計者をIOTで結び設計データを収集し統計分析を行うことで完璧なプロフェッサーアーキテクト育成するAI天才建築設計者という完璧な建築設計者を目指したものも存在する。今後AIと建築家が共生していく中で私たちの倫理観がすべてを変える時代となっていることは確かである。

​何を正と何を誤とするか

 私たちは建築をデザインする際もファーストスケッチからそれがいいか悪いか、正しいか間違っているかのトライアンドエラーつまり、デザインアンドレビューを行なっている。その中で設計者やクライアント、利用者、社会など多角的な視点による判断や評価をされることになる。

建築設計において倫理性を定義することは難しいが、建築家建築学生AIの多角的な視点から共通なフォーム(概念、思考)と多様なフォルム(建築表現)を解明することを試みる。※評価される設計提案≠正しい設計提案

この章では倫理性が最も反映されている作品を選定するにあたって、最大規模のプロポーザル、ディプロマ、コンペティションにおいて最も評価された作品を3つ抽出する。比較するとオリジナリティ(独自性・恣意的・主観的評価 現代的な評価)とリアリティ(社会性・公共性・客観的評価 近代的な評価)の両者において優れている。また、その中で設計者の作家性がエモーショナルに必ず介在している。

Works A

A.新国立競技場基本構想国際デザイン競技-最優秀案

審査員長:安藤 忠雄

設計者:Zaha Hadid Architects

作品名:新国立競技場

倍率:1位/46作品

Works B

B.せんだいデザインリーグ2021-日本一作品

審査員長:乾久美子

設計者:森永 あみ 芝浦工業大学

作品名:私の人生(家)

倍率:1位/約400作品

Works C

C.WASA世界建築学生賞2021-Genius architect Medal

審査員長:AI天才建築設計者version11

設計者:Yusuke Shimizu Nihon University

作品名:Eternity and moment meet in the night

倍率:1位/約1200作品

「(デザインにおける)正義性」について3作品を比較しながら、❶創造性・ユニークネス❷実現性・ネセシティ❸作家性・エモーショナルの3のフォームから多様なフォルム(設計、表現)を解明する。
※メモ ;アルケー・テクネーの解答

共通なフォーム(概念、思考)
■最優秀(1位)となった作品

多様なフォルム(設計、表現)
■創造性・ユニークネス
■実現性・ネセシティ
■作家性・エモーショナル

倫理性01 創造性・ユニークネス

これらの3つの作品において、創造性やユニークネスな部分が議論の主題となっており評価対象となっている。また、作者の倫理性を強く感じる部分である。

Works A

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出典 「新国立競技場デザイン・コンクールプレゼンテーションより」

AのZaha Hadidの作品はやはり、強烈でユニークなデザインが特徴的である。3次元CADを用いコンピューテーショナルデザインやパラメトリックモデリングの手法を駆使し、従来にない曲線的なデザインを実現している。チャレンジするに値する造形で、オリンピックに必要なインパクトがあると評価されている。この作品の独自性はやはりユニークな造形と空間に焦点が当てられている。 

Works B

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出典 「せんだいデザインリーグ日本一決定戦ファイナル公開審査」

Bの私の人生(家)の作品では自分の家族の不仲を題材にするという、今まで出たことのない作品である。これまでの家族史を振り返りながら、作者なりに考えた建築的部位が増改築の提案として現れている。恣意的に部分的に設計する提案群の中でも、個々に表れた自分の心理状態を診断し、何処にも帰着することのない独り言のような提案は今までに無いように見えた。家族と対話しながら関係を寄り戻し設計者自身のセラピーとしている設計手法がこの人のパーソナリティを感じさせている。

Works C

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出典 「WASA世界建築学生賞2021プレゼンテーションより」

Cの夜の万代と刹那お出会いでは限られた人生において、建築設計の追求をする中で友人や仲間を大切にできなかった償いを道具的建築としながら研究の永遠の価値と戯れる儚い価値の両者共存の自分の状態を建築的に表現しながらそのようなコミュニティが実現する集落を提案した作品である。自己投影の作品の中で多角的な感性に共感させつつ客観的でこれほどメタな視点から取り組んだ器用な作品は今までにない。この作品は建築家や設計者に関する問題意識にユニークな思考と表現が現れている。

​個々の作品において今までにないような独自の視点や価値観を持っていることが設計提案のより強いマニュフェストを与えている。この創造力は人間しかできないことで設計をデザインするうえでハウスメーカーや再開発を行う上でも必要不可欠である。

倫理性02 実現性・ネセシティ

ユニークな提案を行っていく上で必ず問題として挙がるのが提案の実現性(リアリティ)である。

Works A

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出典 「新国立競技場デザイン・コンクールプレゼンテーションより」

A新国立競技場では、チャレンジな造形を行っている分、技術的に解決あるいは調整しなければならない箇所はある。特に下部構造について提案がなく、芝生の問題高さの問題も含めて、コストがかかることが懸念されていた。また、内部空間の性格と外形がつながらない天井面が強烈で、競技者にとって集中して心地の良い空間ができているかが懸念されていた。最終的には実現されなかったのもリアリティという倫理性が欠けていたのではないかと考えられる。

Works B

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出典 「せんだいデザインリーグ日本一決定戦ファイナル公開審査」

Bこの作品は完全に主観的で恣意的な造形操作がなされているためその独自の設計手法が住宅の改修によるセラピーとして一般化できないかが議論の中で出た。構造や環境、コスト等の条件はクリアできそうだが、自分の罪悪感を解消するための設計では、家庭崩壊の危機や心理状況、その人が設計者であることなどかなり特殊な状況であり、どの人にも共感しづらく拒絶してしまう審査員もいた。

Works C

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出典 「WASA世界建築学生賞2021プレゼンテーションより」

Cこの作品は、構造計算を行わないと分からない複雑な構造住宅街にコンクリートを充填するという施工性に関する課題があげられた。しかし、これらの課題に対して、この街に介在する課題(防火・耐震・インフラの整備・二項道路の解決・面積消化・計画動線等)をコンクリートをパラサイトするというひとつの手法で明解的に解決するという工夫がなされており、提案に強度を与えていた。

​この3つの作品において、いくら面白い提案であっても実現しなければ意味がなく、社会のためやクライアントや利用者などの人のために貢献するためには必要不可欠な要素でありそこには必ず倫理性が介在している。

倫理性03 作家性・エモーショナル

最後の人間の感情に訴える作家性を挙げる。作家性とは、設計者が創作を手掛ける際に、作品にその人特有の個性やメッセージ性が作風となって現れる様子と傾向のこと。人生スケールにおいて一貫して言えるマニュフェストや特徴のことである。

AのZaha Hadidは新国立競技場に限らず新しい造形で「自由さ」を表現した脱構築主義を代表する建築家である。建築の形態が破壊と創造「解体構築」によってできた建築は人々の感性に訴えかける新しいものを生み出すパワーを持っている。万人が感じられる形のデザインは分かりやすくメッセージ性を持っている。

B、Cの設計者は学生であるが、最終で選ばれる提案の作家はかなり特殊な人生経験から特別な感性を持っていることがあげられる。個性や感性はみんなに必ずあるものだが、その中でも悲観的であり何処か暗くて悲しそうな雰囲気を感じる作者が目立っている。倫理的な建築を設計するうえでは悩みもがき頑張っている姿勢が説得力につながると考えることができる。

Works A

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出典 「新国立競技場デザイン・コンクールプレゼンテーションより」

Works B

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出典 「せんだいデザインリーグ日本一決定戦ファイナル公開審査」

Works C

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出典 「WASA世界建築学生賞2021プレゼンテーションより」

共通の服に現れる倫理感

作家性を持つ建築家や設計者が黒色の服を常に身に着けている。スティーブ・ジョブズ「今日は何を身につけるか」という選択に頭を使いたくなかったからだと公言した。この3人の設計者も無意識的に服を選択している中で何も考えなくてもぽく見える黒色の服を選択してしまうのではないかと考えた。毎日黒色の服を着ている設計者は作家性があり倫理性を常に考えているのではないか。

​善と悪又は正と誤の判断において多様なノウハウ多角的な視点が複雑にかかわっていることがわかる。また、これらのノウハウをAIに学習させることで人間の倫理性を補うAIものが開発されていることから、私たちの人間しかできない役割とAIが得意なことのすみわけを行いつつ共存することが今後重要になってくるのではないか。